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2008年04月10日

「屋上の貯水タンク」

 水不足という言葉を最近あまり聞かなくなった。子供のころの記憶では、雨の少ない時期には、「断水注意報」なるものが恒例であったと記憶しているのだが、近年のダム・上水道の整備や、県民の普段の節水意識のおかげか、最近ほとんど聞かない。記録では、沖縄本島での給水制限は平成6年以降行われていないという。
 ただ、水の心配がそれほどいらなくなった現在でも、住宅を新築する際には、とりあえず断水に備えてか屋上には貯水タンクを設けたいという人がほとんどだと思う。予算的な面や意匠的な面から、貯水タンクを介さずに、上水道管に直接繋げるという方法もあるのだが、水が屋上に貯まっているという安心感からか、だいたいの人は、屋上への設置を望んでいる。
 だいぶ前に水道屋さんに聞いたところ、家庭の水道管を公共の上水道管に直接繋げた場合、地域によって差はあるが、2~3階までならなんとかなるので、断水時に風呂桶などに水を貯めておくなどの工夫をすれば、貯水タンクを設ける必要はないのではないかと正直な気持ちを話していた。ただ、シャワーなどを使う際の水圧については、感じ方に個人差があるため、やはり安定した水圧の確保の為には、屋上の貯水タンクは必要であるとも話していた。
 その屋上の貯水タンク。沖縄の不思議として雑誌・テレビ等でよくとりあげられているように、沖縄を訪れる人にとっては珍しいものに映り、それが貯水タンクであると直ぐに分からない人がいまだに多いらしい。特に、初めて沖縄を訪れ、空港からモノレールに乗った人は、那覇の住宅街の屋上に建物とセットとなった無数の貯水タンクの群れをみて、とても新鮮な気持ちになるのだそうな。
 材質では、強化プラスチック製、ステンレス製、コンクリート製などがある。形も様々で、花ブロックで周りを覆ってみたり、面白くペイントしてあったりと、みていて楽しいものも多く、観光客のカメラにも納まり易い。「角出し住宅」とともに、沖縄の都市景観をかたち作っているもののひとつなのだろう。
 昔から水の確保に苦労してきた沖縄では、自然の雨水をためておく「天水かめ」を始め、貴重な水を確保する生活の知恵が多く生まれた。また、各地に数多く点在している「カー」や「ヒージャー」などの井泉(せいせん)の場は、祭祀の空間として使われてきたということからも分かるように、沖縄の集落は、井泉と密接な関係を保ちながら発展してきた。
 ダム・上水道が整備された現在でも貯水に対する意識が強いというのは、県民の水に対する深い尊敬と信仰が背景にあるのかもしれない。そう考えれば、必ずしも設置する必要がないともいえる貯水タンクにこだわる人が多いのも頷ける。

「屋上の貯水タンク」

(T)



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この記事へのコメント
おひさしぶりです(^д^)/
おげんきそうでなによりです。
最近ミクシーの更新が頻繁のようで覗いてみたらこちらに誘導?されました。
前置きはこんくらいで。
さて久々とあって最近の法改正後の情報を。
屋上のタンク・・・構造適合判定員が難色をしめしはじめているそうです。すでに高さの面では2.5m以上は不可のようで圧力ポンプ付きでなければ直下階のシャワー水圧望めそうにないです。いずれ高架タンクは禁止になる可能性がある事を構造屋さんから聞きました。
あと、凄い状況を一つ。
その構造屋さんと設計事務所の所長さんが判定員のもとに適合打ち合わせに行ったら、最上階の意匠的フレーム(柱と梁)を指摘されこういわれたそうです。
「こんな意味のない飾りを構造設計上みとめる訳にはいかないので削除しろ」的な暴言?ともとれる事を言われ事務所の所長は激怒したそうです。
・・・今は構造のために意匠がある時代になっているようです。構造至上主義とでももうしますか・・・いやはや・・・
その後に判定員と構造設計屋さんとの打ち合わせでは、サッシの荷重を見ているかとか衛生陶器の荷重はどうだとか言われたそうです。もちろん構造屋さんは通常設計段階では業者を決めるのはまずいのでは?との意見に、これからは設計段階でメーカーまで決めるべきだ。そのように審査機関及び設計事務所を指導していくとのたうちまわったそうです。
メチャクチャな世の中の到来になってきてますね。
Posted by ooyama at 2008年04月12日 02:57
ooyamaさん、おひさしぶりです!
コメント、ありがとうございます。赤とブルーチーズとともにまたコアな話聞きたいな、と、たまに想いだしています。ミクシ連動としておりますので、いまのところ更新のお知らせだけで失礼致します。

>高架タンクへの規制・・・
2.5m以上ダメというのは、、、構造は意見が強くなる反面、設備はますます片隅に。。

>構造至上主義
日々感じます。でも、構造屋さん、収入は安定していくけど、ウマの合わない適判員に隅をつつかれたりで、大変な思いしているようですね。施主や業者はもっと大変なのですけれども。。その判定員、設計段階でのメーカー決めを指導していくとは、、、一律に決めろということでしたら相当な頓馬ですね。。

でも構造屋さんも大変だろうけど、判定員も(想像の範囲でですが)実際大変そう。ふらふらと変わる基準に振り回されているのかなぁ。。基準に厳密に対応できるのは、工場型住宅くらいなのでは。。

某技術系掲示板にあったのですが、実務では絵空事のような基準やその根拠が、いったんおかかえ審議会のなかで決定されると、そのまま垂れ流される場合があるそうで。。で、実務者は、これはギャグなのか?と。。教科書検定問題と似ている。。議事録が根拠なんだよ、なんて偽装そのもののような気が・・。もはや火事場泥棒の温床といってもいいくらいの外郭団体と法案しこしこ作業。。公務員の人事制度の問題もあるのでしょうが。。

・・・最近、この手の話を考えたりすると、半分愚痴もでてしまうのか、最後は諦めモードに入ってしまいます。。先の仕事がんばろ。。

そういえば、今月末まで、県ががんばっているのか、民間の悲鳴が通じているのか、緩和措置の説明会が行われるとのことですが、少しは期待できるのでしょうか??。とくに住宅新築や増改築での無意味で高コストな過剰規制をなんとかしてほしい。。一応、説明会、参加する予定です。。
Posted by T at 2008年04月12日 12:20